さて本題です。『トラベラー』は「第三帝国」というある程度固定された世界観を持っていながらも、ファンタジーと違って未来を舞台としている以上、その認識は「今現在の」技術に影響されてしまうのは仕方ないことです。私自身、かつては情報収集に「図書館まで出向いて端末を叩く」という行為に何ら疑問を抱いていませんでしたが、今なら極自然に「宇宙船のコンピュータから星系のネットワークにログインして情報検索」ぐらいのことはするでしょう。
ということで今回は、過去40年間に発売されたルールブックの中から『通信機(Communicator)』に関する部分が、時代の変化に合わせてどのように変遷していったかをまとめてみました。
(※下記解説文は一部文章を省略している場合があります。各単位は特記がない限り、重量はキログラム、容積はリットル、価格はクレジット、距離はキロメートルです)
Book 3: Worlds & Adventures(1977年)
初代Little Black Bookの通信機(Communicator)には特に解説文はなく、しいて言えば(当然とはいえ)無線が使われることと、軌道上の艦船と通信するには長距離通信機が必要であることがわかる程度です。この頃の通信機は、音声トランシーバー以上でも以下でもありません。
Adventure 2: Research Station Gamma(1980年)
この『研究基地ガンマ』では、基本ルールブックには存在しない「個人用通信機(Personal Communicators)」が初登場します。TLの記載がなぜかありませんが、後の設定から逆算してTL8~9程度の物品と思われます。
個人用通信機 Personal Communicators
長寿命のバッテリーを備えた小型のイヤホン型短距離通信機です。重量は無視できるほどで、一般の者にはまず気付かれません。
有効距離:開けた場所なら10km、水中なら1km未満。価格:1個Cr.100。
Double Adventure 2: Across the Bright Face(1980年)
邦題は『焦熱面横断』。記録媒体がTL11なのにも関わらずテープなのが時代を感じさせます(※TL11光学ディスクが最初に登場するのは『The Travellers' Digest』誌第5号(1986年)が最初だと記憶しています)。『Double Adventure 5: The Chamax Plague』(1981年)でも同じ装備が登場しますが、なぜか価格だけが2倍になっています。
無線送受信・録音機 Radio Receiver, Recorder, Transmitter
音声または無線を受信し、記録し、その情報を連続的に送信することができる小型電子装置です。送受信は標準的な音声通信帯域で行われます。従ってこの機器は信号を受信して再送信したり、事前に記録された音声を継続的に送信したりすることができます。
テープの長さ:10分。送信範囲:視界(建物や山などには遮られる)。TL11。寸法:25✕50✕50mm。基本価格:Cr.400。
Book 3: Worlds & Adventures(1981年)
改訂版Little Black Book(雷鳴社版はこれが基になった)では、簡素ながら解説文と、TL7の軽量版通信機が追加されました。
短距離通信機(Short Range Communicator):ベルトに装着される無線機で、有効範囲は10kmです(地下や水中ではより短くなります)。
中距離通信機(Medium Range Communicator):ベルトに装着もしくは肩掛けで運ばれる無線機で、有効範囲は30kmです。
長距離通信機(Long Range Communicator):背嚢で運ばれる無線機で、有効範囲は500km。加えて軌道上の艦船と通信ができます。
The Traveller Book(1982年)
1981年版LBBを合本し、記述や編集を大幅に見直したこの本から通信機の項目が「個人用装備(Personal Devices)」から独立して再構成され、更に解説文が詳しくなりました。なおこの記述は翌1983年発売の『Starter Traveller』(ホビージャパン版はこちらが基)でも踏襲されています。
ここでは短・中・長距離に加えて大陸間距離(Continental Range)が追加され、無線到達距離の区分けも変更されています。文を見てわかる通り「データ」の送受信も可能となっています。またTL10~13の「未来の」通信機も追加されましたが、運用の仕方は依然として「双方が受信範囲内に居る」トランシーバーを前提としているのは否めません。
ところでなぜかこの版(と83年版)のみ、軌道上の艦船との通信に必要な能力が中距離に変更されています。50kmでは地球なら成層圏までしか届かないのですが…?
通信機 Communicators
通信機は内部電源で作動する無線送受信機の組み合わせと定義されます。携帯用なので供給電力に接続する必要がありません。これは音声とデータを送受信することができます。軌道上の艦船と通信するには最低限中距離用が必要です。
Megatraveller: Imperial Encyclopedia(1987年)
邦題は『メガトラベラー:帝国百科』。従来の通信機とは別に「通信機(動画)」「通信機(レーザー)」が追加されたのが特徴です。通信機の項目からは「軌道上の艦船との通信」に関する文が消え、レーザー通信機にその用途が移されたように読めます。
TL10で登場する貼付式通信機の「コムドット(Comdot)」がルールブックに登場したのもここからです。これは耳の裏と喉仏に貼り付けられる超薄型のイヤホンマイクですが、送受信範囲が1メートルなので通信機の子機として専ら使われます。通話で手が塞がれないのが大きな利点です。
通信機 Communicator
(上記1982年版の解説に追記)0.2リットル以下のものは耳に装着でき、一般の者には気付かれません。
(※これは『研究基地ガンマ』に登場した「個人用通信機」の設定が取り込まれたと思われます)
通信機(レーザー) Communicator, Laser
レーザー通信機は視線の通る地域間距離(500km)以内を結ぶ機器です。この距離ともなると地平線までの距離がまず有効範囲を制限するので、地表ではほとんど必要とされませんが、軌道上を周回する艦船との通話の際に利用されます。レーザー通信機の主な利点は、収束光によって秘話通信を確保することにあります。
複数のレーザー通信機ではしばしば「連携」通信網が構築されます。地平線や地域間の距離を置く基地局から基地局へと再送信することによって、世界中に通信を即座に伝えることができます。
通信機(映像) Communicator, Video
映像通信機は、500km(地域間距離)の範囲に音声と二次元映像を送信します。この機器はポケットに入れて運んだり、ベルトに掛けられるほどに小さいです。通信機には入力用のマイクとビデオカメラ、出力用の小型スピーカーと高透過性キュプロタリウム(polylucent cuprothallium)ディスプレイが内蔵されています。ディスプレイは使用されない時には本体内に格納され、ビデオカメラは必要に応じてスイッチを切ることができます。機器がベルトに装着されているなら、コムドットで話したり聞いたりすることができます。
(※ちなみにこの型の通信機(に加えてコムドットやレーザー通信機)の初出は『Grand Census』(Digest Group Publications, 1987年)で、そこでは大きさは「15cm✕10cm✕3cm」とされています)
Traveller: The New Era(1992年)
解説文は上記の『メガトラベラー』のものを大筋で踏襲していますが、機種の整理統合、一部説明文の簡素化、容量・重量・有効距離の変更がなされています(※MTとは逆に重量が容積の倍の値になっているのですが…?)。あと、コムドットはこの新時代には残らなかったようです(笑)。
Reformation Coalition Equipment Guide(1994年)
軍事ゲームの色が強いTNEの装備品ガイドなので、ここで紹介されている通信機も軍用装備ばかりです。通信機の変遷という今回の企画意図から大きく外れるので紹介は割愛しますが、後にも先にも「メーザー通信機」のデータが有るのはこれだけのはずです。
Marc Miller's Traveller(1996年)
基本設定の変更(帝国暦0年)に伴い、TL12が最先端技術扱いです。また「Comm」という略語が正式名称となった初のバージョンです。
これまでの設定が統合されて、通信機一つで「手帳・時計・携帯テレビ電話」を兼ねるようになりました。そして低TL版通信機の存在が見当たりません。ここへ来てようやく、現代では常識の「通信機が基地局を経由して遠方の他の通信機に接続する」方式が登場して利便性が向上しています(逆に基地局のない低技術世界では使い物にならなくなってしまいますが)。
通信機 Comm
通信機は、個人的な手帳、時計、携帯テレビ電話の機能を持つ通信機器の一形態です。一般的には男性用腕時計程度の大きさですが、首飾り、サングラス、折り畳み大画面の搭載、もしくは音声のみの耳輪にすることもできます。TL12の暗号化技術を利用して盗聴を防止した送受信が行われます。
個人用通信機には所有者に関する基礎情報が入力されており、音声などで動かすことができます。一般的には所有者の名前・住所から親族・友人・仲間の通信コードのリストなど、所有者が持ち運ぶのに重要であると考える様々な情報が収められています。通信機は後に検索可能な少量の音声・動画、およびデジタルデータを受信して格納することができます。記憶容量は限られていますが、低品質のビデオカメラとして使うことができます。
多くの星系では法令執行のために上書き命令(override command)ができるようになっています。これは火災や暴動などが発生した際に、警察本部から地域内全ての通信機に放送をするためです。
電子機器の進歩に伴い、通信機は電力消費低減の代償に近隣に基地局を必要とするようになりました。人口密集地域や主要な旅行先では問題になりませんが、田舎や辺境ではブースターが利用されます。これは財布程度の大きさの増幅器で、通信衛星を介して相手まで通じるのに十分な強度で通信信号を送信します。衛星回線の利用は若干高価です。
通信機は安価な物ならCr.50から、高性能の物ならCr.200で販売されていて、重量は0.1kg以下です。通信機はコンピュータ/1と同等です。
GURPS Traveller(1998年)
T4が先進的過ぎたのか、1977年版LBBと同様の通信機像に差し戻されています。ただしなぜかTLは8に引き上げられました(※誤植ではないようです)。ここでは割愛しましたが「TL8デジタルカメラ」が別に存在することから、画像撮影の機能もなくなったと思われます。
(※GURPSルール下ではTLの刻みが従来と異なるため、この項目では独自に変換を行っています)
通信機(短距離)(TL8) Communicator, Short-Range
しばしばヘルメットに組み込まれている、小型の双方向無線機です。基本有効範囲は10マイルで、TL9ではその10倍に、TL12では50倍となります。Cr.50、重量は無視できるほどです。価格を1割増しで腕時計や耳飾りに偽装できます。
通信機(中距離)(TL8) Communicator, Medium-Range
手の平に乗る大きさの無線機です。基本有効範囲は100マイルで、TLによる拡大は上記と同様です。表示画面の追加はTL8なら価格が2倍となりますが、TL9なら無料で追加できます。Cr.200、重量1ポンド。
通信機(長距離)(TL8) Communicator, Long-Range
書籍程度もしくは背負われる大きさの機器です。基本有効範囲は1000マイルで、TLによる拡大は上記と同様です。Cr.600、重量10ポンド。表示画面はTL8ならCr.100で、TL9以上なら無料で追加できます。
GURPS Traveller: First In(1999年)
偵察局や探査活動を解説するこの本ではレーザー通信機と、コムドットと同等性能の「隠密行動通信機(Covert Action Communicator)」が登場します。TL15相当の装備とされたお陰か、有効範囲が単体で50マイルと広がり、低軌道上の艦船との直接通話も可能とされています。
レーザー通信機(TL8) Laser Communicator
屋外用レーザー通信機は、無線通信が傍受される恐れのある際に探査隊が使用することが多いです。レーザー装置は頑丈な三脚に取り付けられており、狙いを維持しやすくなっています。有効範囲はTL8で10マイル、TL9で100マイル、TL12以上で500マイルですが、障害物によって妨げられます。連続送信で1時間稼働します。Cr.650。重量5ポンド。
Traveller20: The Traveller's Handbook(2002年)
こちらもTL7以前の通信機はLBBを踏襲した上で、新たに「TL8個人通信機(Personal Communicator)」を登場させています。文面からすると、この段階では音声のみの携帯電話に相当する物でしょう。
長距離通信機 Long Range Communicator
背嚢で運ばれる無線機で、有効範囲は500kmもしくは軌道上の艦船までです。TL7では重量が1.5kgに減り、ベルトまたは肩紐に装着できます。
中距離通信機 Medium Range Communicator
最大30km圏内に対応できる、ベルトもしくは肩紐装着式の無線機です。TL7では重量が500gに減ります。
短距離通信機 Short Range Communicator
10km圏内(地下または水中では更に短くなります)で利用できるベルト装着式の無線機です。TL7では重量が300gに減り、片手で持てるようになります。
個人用通信機 Personal Communicator
携帯型の、単回線通信機器です。TL8以上の世界では、個人用通信機が世界の衛星通信網に接続し、有料で他の通信機に連絡することができます。回線は秘匿されていますが安全ではなく、一部の世界では監視される場合があります。通常、各星系の宇宙港ではわずかな料金で通信網への接続手段を手配できます。TL7以下の世界では個人用通信機は動作しません。
Traveller Hero(2006年)
長中短の各通信機については「無線トランシーバー」と簡単な解説、というより定義があるだけです。TL9装備になった分だけ軽量化がされています。
携帯型レーザー通信連絡器 Portable Lasercomm Relay
地表から軌道上への通信に利用されます。無線ではなく収束光で送信するため、秘話通信が可能です。
通信機(映像) Communicator, Video
ポケットやベルトで運べるぐらいに小さく、音声や二次元映像信号を最大500km送信できます。
Mongoose Traveller: Main Rulebook(2008年)
ここでは音声のみのTL5トランシーバー(Transceiver)、通話に画像送信も含めたTL8の通信機(Comm)、超小型イヤホンマイクなTL10コムドット(Commdot)の3種類に分けられました。コムドットはともかくとして、トランシーバーも通信機も「TLが高くなるほどコンピュータとしての機能も向上する」のが特色です。マングース版ルール下ではコンピュータの性能値以下のプログラムを実行することができるので、主な用途としては〔翻訳(Translator)〕や〔熟練(Expert)〕(※知力・教育度関連技能判定の支援を受けられる)を走らせることが想定されます。
トランシーバー(TL5) Transceiver
トランシーバーは単独運用される通信機器です。確立された通信網の存在に依存する通信機と異なり、トランシーバーは自らの電力で直接送受信することができます。ほとんどのトランシーバーは無線またはレーザーで通信が行われます。中間子トランシーバーも実現可能ではありますが、一般的には簡単には利用できません。確実に軌道上まで届かせるためには、500kmの有効範囲が必要です。
Radio Transceivers520505 821005 9125050コンピュータ/0 121500500コンピュータ/0 13110005000コンピュータ/1 レーザー・トランシーバー
Laser Transceivers9 1.5100500 110.5250500コンピュータ/0 13-500500コンピュータ/1
通信機(TL6) Comm
個人用通信機は、かさ張った送受話器(handeset)から薄型腕時計まで様々な大きさの携帯型電話兼コンピュータ兼カメラです。比較的大型の通信機は物理的な制御盤(※キーボードなど)と画面を持ち、小型のものは近くにデータや制御表示を投影したり、折り畳み式の画面に表示したり、サイバー化機器に接続(※人工網膜への投影?)したりします。通信は短距離の送受信機能しか持っていませんが、技術的に進んだ世界の多くでは惑星全体を覆う通信網を持ち、利用者がどこにいてもメッセージを送信してデータに接続できるようになっています。
Traveller5: Core Rules(2013年)
様々なMakerによってあらゆる物を設計することが前提のT5ですが、さすがにそれではすぐに遊べないので、見本がいくつか掲載されています。
通信機 Comm
一般的な通信機は容積0.2リットルの手持ち可能な機器で、有効距離は1000kmです。デザインには無数のバリエーションがあります。
通信機(改良型) Comm, Modified
一般的な通信機の高技術版です。
通信機(最先端) Comm, Advanced
帝国で製造された最高級の通信機です。これは何年ものの激しい使用に耐えるよう作られています。その「壊れない」電子基板は、人間工学に基づいたケースに収められています。ケースは改造防止機能を備えており、バッテリーには緊急用の内部ブレーカーが装備されています。
通信機(据え置き) Comm, Installation
惑星間通信に用いられるような大規模通信アレイです。
通信機(長距離) Comm, Long Range
携帯型通信機の優れたバージョンです。
通信機(豪華版) Comm, Luxury
この通信機は非常に優れた物です。例として「ナアシルカCX-5700」は、信頼性の高いナアシルカ社製電子技術と優れた安全機能で知られています。この通信機は一般的な物と比べて25グラム軽い以上に、驚くほど軽く感じます。このクラスの通信機ともなると、天然素材の使用、個人に最適化された執事ソフトウェア、高度な侵入防止プログラム、衛星誘導機能(※俗に言うGPSです)など、様々な注文生産が可能となっています。
通信機(高耐久型) Comm, Ruggedized
典型的な高耐久型通信機は、危険な任務を前提に設計されています。例えば10メートルからの落下にも耐えて、それでも機能します。内蔵された動画または静止画カメラのために、優れた雑音除去や逆光軽減などの機能が備えられています。「T-Del C10r」のような通信機は、真空や腐食性大気の中でも短時間耐えることができるため評価されています。
通信機(車載) Comm, Vehicle
車載通信機は軌道上(500km)まで通信できます。
無線機 Radio
容積1.5リットルのトランシーバー、もしくは携帯電話のことです。
無線機(試作段階) Radio, Experimental
「SCR-300」は、有効範囲5kmの人が運べる大きさ(容積15リットル)の試験的通信機です。
Traveller: Liftoff(2014年・未発売)
装備品リストの中にはないですが、「誰もが持っている物(Stuff Everyone Has)」の中に「スマートフォンと同類の個人用通信機(A personal communicator similar to a smartphone.)」の記述があります。
Mongoose Traveller: Core Rulebook(2016年)
第2版ルールに移行したマングース版『トラベラー』ですが、記述自体に変更はありません(通信機(Comm)が携帯通信機(Mobile Comm)に変わった程度)。トランシーバーにいくつか機種の追加と変更があります。旧来のルールと比べて欠落していた部分の穴埋めとバランス調整でしょう。
Cepheus Engine: System Reference Document(2016年)
建前上は『トラベラー』ではないですが系列ゲームですし、一応「最新」なので紹介します。Open Game Licenses下にあるT20(厳密にはSciFi20?)を踏襲、というよりデータ面は全く同じですが、T20にはなかった解説文が追加されました。
通信機 Communicators
物理的に隔てられたキャラクターは、時に会話を維持する必要があります。これらの通信機器はその要求を満たします。これらの機器の日常的な利用には技能判定は必要ありませんが、混信を解消しようとしたり他の目的で使用する際には〈通信機〉技能判定が必要です。
【まとめ】
この40年の「通信機」の変遷を見てきたわけですが、ゲームのルールとしての後方互換性の確保(や大人の事情)もあって、「通信機」の解釈も行きつ戻りつしているように感じます(T4が意外にも飛び抜けて先進的な通信機像を提示しましたが)。とはいえ、今更「スマホすらない未来社会」という世界観を提示するのは無理があります。ならば、これまで記されてきた数々の設定を「美味しいとこ取り」して「均していく」必要があると思います。
まず、『Liftoff』で提示された「誰もが個人用通信機を持っている」という設定は採用の価値があるでしょう。また同時に、T4やマングース版の「高TLの通信機はコンピュータと同等」という設定もありです。通信機としての全体的なバランスではマングース版がいいとは思うのですが、TL13のトランシーバーなんて需要あるか?という疑問はあります。反重力車両がやがて船舶や航空機を駆逐したように、TL10~11ぐらいで全てが個人用通信機に統合されてしまっても良いのではないか、と思います(まあ軍隊のことを考えるとそうもいかないのかもしれませんが…)。
そして「個人用通信機」(略称はパーコムでしょうか、モバコムでしょうか?(笑))の設定も考え直してみます。未来デバイスですから音声操作は当然としてホロ(三次元)画面の一つも採用したいところですが、『メガトラベラー』設定では「Pocket Holovideo」(T5設定だと「Personal Holovideo」)なるものはTL16の産物とされています。帝国では家庭用三次元テレビはあってもモバイル環境で立体映像は見られなさそうです。
個人用通信機にホロカメラ機能を搭載するのも問題です。『メガトラベラー』設定ではホロビデオ技術の確立はTL10、手持ち型ホロカメラ(Hand Holocameras)がTL13です。前述の「Pocket」や「Personal」が何を指しているかがあやふやなのが困るところですが、録画機能も含めた意味でのことだとすると、個人用通信機にホロ動画撮影機能が搭載されるのはTL16以降ということになります。
こうなると、TL8~9のスマートフォンと見かけは大差ない(といっても中身のコンピュータは進歩した)物をTL12以降の旅人も携帯している、というあまり夢のない結論が出てしまいそうですが、「公式」設定を崩さないようにするにはそうせざるを得ないでしょう、残念ながら。まああまり進歩しすぎた未知のデバイスをプレイヤーに想像させるのもなかなか難儀なことですし…、眼鏡や腕時計などのウェアラブルな方向へ進化させるのが妥当な落とし所でしょうか。いずれにせよ現代のレフリーは、キャラクターがどこにいてもライブラリ・データを検索し、仲間と連絡をつけることに対して心構えが必要なのは間違いありませんね。
なお、本稿の作成にあたり各方面に多大なご協力を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。